最近、いろいろな方が作ったAIプロダクトを見る機会があります。
同じようなAIを使っていても、出てくるものはまったく違います。
良いプロダクトを作っている人は、AIの操作が上手なだけではありません。
誰の、どんな問題を解くのか。
なぜ、今それを作るのか。
これまでの方法の、どこに違和感があるのか。
その手前にある思考が深いのだと思います。
もちろん、思考力だけを個人の能力として語ることはできません。
考えるためには、時間が必要です。心の余裕も必要です。目の前の仕事に追われ続けていれば、立ち止まって問いを持つこと自体が難しくなります。
だからこそ、AI時代に必要なのは、新しい道具を使う時間だけではありません。「自分は何を問うのか」を考える余白なのだと感じています。
良い人生を支える、3つの感覚
哲学の根幹に触れる講座の中で、「良い人生とは何か」という問いがありました。
幸せとは何か、と言い換えてもよいと思います。
自己決定理論では、人の健やかな成長やウェルビーイングを支える基本的な心理欲求として、次の3つが挙げられています。
1. つながり:誰かと関係を持ち、受け入れられている感覚
2. できる感:自分にはできる、力を発揮できるという感覚
3. 自分から感:自分で選び、自分の意思で動いている感覚
専門的には、関係性、有能感、自律性と呼ばれます。
なかでも、ぼくが強くひかれたのが「自分から感」です。
同じ仕事をしていても、「やらされている」と感じるのか、「自分で意味を見いだして取り組んでいる」と感じるのかで、心の状態は大きく変わります。
自律性は、何でも好き勝手に決めることではありません。
与えられた状況の中でも、自分なりの目的や選択を持てていることです。
問いかけることで、人生の主導権を取り戻す
やらされ感を、自分から感へ変える入口になるのが問いです。
「これは、何のためにやるのか」
「もっとよいやり方はないか」
「ここから、ぼくは何を学べるか」
誰かに決められた仕事でも、この問いを持つことで、自分の意思が入る余地が生まれます。
講座で聞いた「問いかけることによって、自分の人生の自律性を取り戻す」という話は、ぼくにとって非常に大きな学びでした。
問いを立てることは、単に思考力を高めるトレーニングではありません。
自分の人生を、もう一度自分で選び直す行為なのです。
知らないと気づいたところから、学びは始まる
そして、もう一つ心に残った言葉があります。
答えは古びる。
問いは古びない。
今は正しい答えでも、技術や社会が変われば使えなくなることがあります。
しかし、「何のためにするのか」「もっとよい方法はないか」という問いは、状況が変わっても何度でも使えます。
ソクラテスの「無知の知」も、単に何も知らないという話ではありません。
知らないことを、知っているつもりにならない。その自覚があるからこそ、問いを立て、学び続けられるという姿勢です。
講座では、問いの重心が「Why」から「How」へ広がってきたという話も紹介されました。
なぜ、そうなっているのか。
どうすれば、できるようになるのか。
もちろん、どちらか一方だけでよいわけではありません。
Whyは進む方向を確かめ、Howは現実を動かします。二つを行き来することで、問いは初めて行動につながります。
知恵は、答えとして受け取るだけでは自分のものになりません。
問いを通して、自分の中から引き出していくものなのだと思います。
今日、やらされていると感じることがあるなら、始める前に一つだけ問いを置いてみてください。
「これは、自分にとって何のためにあるのか?」
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
その問いを持つだけで、ただこなしていた仕事の中に、自分の意思が少し戻ってきます。
この記事を読んで浮かんだ「問い」や、「最近やらされ感があること」があれば、ぜひコメントで教えてください。
仕事のことでも、学びのことでも、家族のことでも構いません。
誰かの問いを読むことで、自分では見えていなかった前提に気づくこともあります。
次回は、良かれと思って立てた問いが、かえって思考や対話を止めてしまう「問いの落とし穴」を取り上げます。
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「やらされてる」か「自分で意味を見いだしてる」か、っていう線引きのところで、すとんと来ました。自分、毎朝つけてる記録が、いつのまにかチェックを埋めるだけの作業になってて。埋まると気持ちいいから続けてはいるんですけど、なんのためだっけ、が抜け落ちてる気がします。おさるぼんさんの言う自律性、たぶん今そこから一番遠いところにいるやつだなと。
与えられた仕事であっても、「何のためにやるのか」という問いを一つ挟むだけで、「やらされ感」が「自分の意思」に変わるというお話に深く共感しました。日々のタスクに忙殺されていると、どうしても受動的になって心がすり減ってしまいがちです。だからこそ、自分の行動に自分なりの目的や意味を選び直すというアプローチは、仕事や生活の主導権を自分の手に取り戻すためにとても大切な姿勢ですね。