ここまで、ショックを受けた心がたどる道のりを見てきました。
「現実を受け止められない否認」。
そして、「自分を守ろうとする怒り」。
今回は、多くの人が何度も繰り返してしまう「あのとき違う選択をしていれば」という思いについて考えます。
「取引」という言葉を聞いても、あまりピンと来ないかもしれません。
でも、この段階を経験する人は少なくありません。
ショックを受けたあと、人はこんなことを考え始めます。
「あのとき、別の言い方をしていれば。」
「あの日、違う選択をしていたら。」
「もう一度だけやり直せたら。」
過去を書き換えようとするような考えが、何度も頭に浮かびます。
ぼくにもありました。
「あの場面で違う言葉を使っていたら、結果は変わっていたのではないか……」
そんなことを何度も考えました。
もちろん、答えは出ません。
過去は変えられないからです。
それでも人は考え続けます。
なぜでしょうか。
ぼくは、「何とか元に戻したい」という心の働きなのだと思っています。
大きな喪失を経験すると、脳は簡単には現実を受け入れられません。
だから、「別の未来があったのではないか」と可能性を探し続けます。
でも、その答え探しには終わりがありません。
どれだけ考えても、
「本当はどうなっていたか。」
それは誰にも分かりません。
ぼく自身、あるとき、ふと気づきました。
過去を変える方法を探している限り、前には進めない。
必要だったのは、「あのとき」を考え続けることではなく、「これから」を考えることでした。
もちろん、すぐには切り替えられません。
何度も同じ場面を思い出します。
「ああしていれば。」
「こうしていれば。」
そのたびに、自分にこう言い聞かせるようになりました。
「あのときの自分には、あの選択しかできなかった。」
そう思えるようになってから、少しずつ過去との距離が取れるようになりました。
もし今、「あのとき違う選択をしていれば」と考え続けているなら、それは珍しいことではありません。
心が元の世界へ戻ろうとしている途中なのです。
でも、人生は前にしか進めません。
過去を変えることはできませんが、これからの選択は変えられます。
ぼくは、そう考えています。
次回は、「抑うつ」の段階について書きます。
心も体も動かなくなる時期を、どう過ごせばいいのか。
一緒に考えていきましょう。
もし「あのとき違う選択をしていれば」と考え続けているなら、今振り返ると、あの頃の自分にどんな言葉をかけてあげたいですか。
よかったらコメントで教えてください。じっくり読ませていただきます。




「あのとき違う選択をしていれば」と、答えの出ない過去のやり直しを頭の中で繰り返してしまうお話、とても身につまされる思いで読みました。「あのときの自分には、あの選択しかできなかった」と言い聞かせることで少しずつ距離を取っていくというプロセスに、深く救われる人が多いのではないかと感じます。変えられない過去に囚われる自分を責める必要はなく、心が元に戻ろうとする自然な防衛反応なのだと教えてくれる記事ですね。
おさるぼんさん、こんばんは
麻酔医で現在霞ヶ関の官庁勤め、スーパーエリートと思っています、そして明瞭な文書から、感情もコントロールするタフな方だと、推察しておりました。
そんなおさるぼんさんも、こんな心境になることあるのですね。