質問したのに、場が止まってしまう。
そんな経験はありませんか。
会議で意見を聞いたつもりなのに、返ってくるのは短い返事だけ。
面談で深掘りしたつもりなのに、相手の表情が固くなる。
学会や勉強会で質問したあと、話が広がらずに終わってしまう。
ぼく自身、慈恵医大の麻酔科にいた頃、「学会で講演を聞いたら、必ず質問してきなさい」と教えられました。
最初は、とにかく何か聞かなければと思っていました。
でも、何度も質問するうちに、少しずつ分かってきたことがあります。
良い問いには、誰にでも使える一つの正解がありません。
相手や場面、議論の段階によって変わるからです。
一方で、思考や対話を止めてしまう「悪い問い」の型は、ある程度見つけられます。
YesかNoで終わる問い。
複数の論点が混ざった問い。
相手や場面に合っていない高さの問い。
今日はこの3つの落とし穴を見ていきます。
YesかNoかを聞いた瞬間、話が終わる
最初の落とし穴は、「閉じた問い」です。
「このプロジェクトを進めていいですか?」
これでは、答えはYesかNoで終わります。
もちろん、閉じた問いがすべて悪いわけではありません。
議論を収束させ、最後の意思決定をするときには役立ちます。
ただ、まだ可能性を探している段階で使うと、話が広がる前に終わってしまいます。
そんなときは、5W1Hを使って問いを開きます。
- 進めるとしたら、何が必要ですか?
- どんな条件がそろえば、進められますか?
- 誰の合意が必要ですか?
同じテーマでも、返ってくる情報は大きく変わります。
哲学で大切なのは、問いに一度答えて終わることではありません。
問いに対して仮の答えを出し、その答えをまた問い直す。問いと答えが、ぐるぐる回りながら深まっていく過程です。
議論にも、広げる「発散」と、選び取る「収束」が必要です。
いまは可能性を広げたいのか。それとも決めたいのか。
問いを立てる前に、議論の現在地を確かめる必要があります。
一度に複数問うと、何も答えられなくなる
二つ目の落とし穴は、複数の論点が混ざった問いです。
「来期の予算と新規プロジェクトの人員配置、納期の前倒しについて、どうしましょうか?」
これを急に聞かれても、どこから答えればよいのか分かりません。
予算、人員、納期は関係しています。
それでも、考えるときはいったん分けたほうがよい。
- 来期に使える予算の上限はいくらですか?
- 新規プロジェクトには、どの役割が何人必要ですか?
- 納期を前倒しする場合、何を変更する必要がありますか?
基本は、一問一答です。
短く分けることは、問いを単純にするだけではありません。相手がどの論点に答えているのかを、全員で共有するための配慮でもあります。
問いには、ちょうどよい「高さ」がある
三つ目は、問いの抽象度。
「どうすれば、良い組織になりますか?」
これでは抽象的すぎて、人によって思い浮かべるものが違います。
反対に、目の前の細かな手順だけを聞き続けると、そもそもの目的を見失います。
問いの高さを上げたいときは、こう聞きます。
「ぼくたちが、本当に達成したいことは何ですか?」
問いの高さを下げたいときは、こう聞きます。
「最近、それを感じた具体的な場面を一つ教えてください」
相手が経営や方針を考える立場なのか、現場で実行する立場なのかによっても、答えやすい高さは変わります。
抽象と具体は、どちらかを選ぶものではありません。相手の視点に合わせながら、行き来するものです。
問いを口にする前に、3つだけ確認してみてください。
1. YesかNoだけで終わる問いになっていないか
2. 一つの問いに、複数の論点を詰め込んでいないか
3. 相手や場面に合った高さになっているか
良い問いを一度で当てようとしなくても大丈夫です。
答えを受け取り、次の問いへつなぐ。
その繰り返しが、質問力を育てていきます。
もし、最近の会議や面談で「質問したのに話が広がらなかった」と感じた場面があれば、ぜひコメントで教えてください。
その問いを、どう直せば対話が深まるのか。
次の記事以降でも考えていきます。
次回は、相手を誘導する問いや、人を追い詰めてしまう「なぜ」など、問いに隠れたさらに深い落とし穴を取り上げます。
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まだ可能性を広げたい段階で「YesかNoか」の閉じた問いを投げてしまうと、そこで思考が止まってしまうという指摘にとても共感しました。5W1Hを使って問いを開き、相手からより多くの情報を引き出すアプローチは、質の高い対話を行う上で非常に重要ですね。いま自分たちが議論のどこにいるのかを意識して問いを使い分ける視点を、日々のミーティングでも意識したいと思います。