久しぶりに連絡を取ろうと思った友達のアイコンをタップし、メッセージで開いたまま、結局何も書かずにそのまま閉じたことって、よくありますよね。
用件があるわけではない。
ただ、ふと顔が浮かんだ。
でも、「用もないのに連絡するのも変だな」
そう思って、画面を閉じる。
ぼくにも、何度もあります。
たぶん、これを読んでいる方の多くにも、同じような相手が一人はいるのではないかと思います。
キャリア後半戦の関係は、静かに目減りする
40代後半から50代にかけて、ぼくたちはたくさんの関係を抱えています。
かつての上司、世話になった先輩、別の部署に移っていった同僚、出向先で出会った人。その一つひとつが、長い時間をかけて積み上げた資産です。
ところが、この資産には厄介な性質があります。
放置しておくと、静かに目減りするのです。
会う回数が減り、やり取りが用件だけになり、やがて連絡そのものが止まる。
お互いに悪気はありません。
ただ、忙しさの中で、用のない連絡を「後回し」にし続けるだけです。
そして気づいたときには、急ぎの相談すら切り出しにくい距離になっている。
これは、誰の身にも起きているのではないでしょうか。
「言わなくてもわかる」は、効率ではなく甘え
ぼくたちは、用件だけ簡潔に連絡するのが、大人の礼儀であり効率だと思っています。特に、付き合いの長い相手にはそう考えがちです。
「これまでの関係があるのだから、いちいち言わなくても察してくれるだろう」。
一見、信頼の証のように見えます。
でも、本当にそうでしょうか?
これは、相手に「察する」手間をぜんぶ預けているということです。
楽をしているのは、発信する側です。
信頼を使っているようでいて、実は信頼という資産を、少しずつ食い潰している。
ここに、すれ違いが静かに溜まっていきます。
ぼく自身が、まさにこれをやっていました
先日、出向元でお世話になった上司と認識の相違があり、久しぶりに直接会って話す機会がありました。
お互いに思っていたことを話せて、良い時間でした。
でも、話し終えて残ったのは、自分への反省でした。
すれ違いの主な原因は、ぼくの側にあった。
こう書くと、ぼくが人とぶつかりやすいタイプに見えるかもしれません。
でも、相手によります。
気楽に話せる相手とは、いくらでも話せます。
くだらないチャットをします。
問題は、緊張する相手です。
ぼくは、よく喋る人間だと思われがちです。
でも本当は、緊張する相手にはひどく尻込みします。
目上の人に一言送るだけで、何度も書き直してしまう。
「間違えました、てへぺろ」で流せる相手ではないと思うと、指が止まる。
そうやって、用事がない限り連絡しないことを、自分では「礼儀」だと思い込んでいました。
でも、それは礼儀ではなく、甘えでした。
緊張する相手だから、察してもらおうとしていただけだったのです。
信頼構築は、トラブルが起きてからは間に合わない
テキストのやり取りがいちばん難しくなるのは、トラブル時にテキストだけで連絡を取ろうとする時です。
普段連絡していない相手に、急に重い話を持ち込む。
うまくいくはずがありません。
信頼関係は、必要になった瞬間に取り出せるものではないのです。
平時に、少しずつ耕しておくしかありません。
だからこそ、用のない他愛もない雑談が効いてきます。
完全リモートで仕事を回している海外の企業、たしかGitHubだったと思いますが、そこでも雑談専用のチャット(coffee chat)が組織を支える鍵になっている、という話を読みました。
いま働いている省庁でも、隣の席の相手に、声に出すほどでもないくだらないことをチャットで送り合っています。
表情は、真面目に仕事をしているふりをしながらw
こうした何でもないやり取りが、いざという時の距離を、ぐっと縮めてくれます。
大切な相手ほど、用事がなくても連絡しよう
もちろん、用件を簡潔に伝える力は、専門職にとって大事な技術です。
効率化が悪いわけではありません。
ただ、それだけでは土台が痩せます。
単身赴任で数年離れた夫婦が、戻ってきた頃には心の距離が開きすぎていた、という話があります。
仕事の関係も、同じです。距離が開くほど、会う回数が減るほど、かつて親しかった相手ほど疎遠になりやすい。
そして、大切にしたい相手ほど、用のない連絡をためらってしまう。
順番が、逆なのだと思います。
大切にしたい相手こそ、用事がなくても、自分から一言を送る。
「こんな情報、見つけたんですけど、知ってましたか」。
そのくらいで、十分です。
信頼関係は、察してもらうものではありません。
自分から、平時に耕すもの。
緊張する相手だから連絡しない、ではなく、緊張する相手だからこそ、用のない一言を。小さなことです。でも、その積み重ねが、いざという時の自分を助けてくれるのだと思います。
あなたのスマホにも、開いては閉じている名前が、一人くらいいるのではないでしょうか。その相手に、用事のない一言を送れるかどうか。
最近そんなふうに感じた相手がいたら、よければコメントで教えてください。
このニュースレターでは、AI時代の学び直し、専門職のキャリア後半戦、医療DXについて書いていきます。興味が湧いたら、登録しておいてください。


「言わなくてもわかる」を効率ではなく相手への甘えと捉え直し、平時の他愛もないやり取りで関係性を耕しておく重要性に、深く納得させられました。
相手の声を深く聴き、それに対して誠実な言葉を返すという「確かな対話」は、緊迫した有事の瞬間だけでは成立しません。平時から用のない一言を交わし、心理的な距離を縮めておくからこそ、いざという時に本音で聴き合える強固な土台が生まれるのだと改めて教えられました。