AI時代に専門職が真っ先に身につけるべきスキルは何でしょうか。
ChatGPTやClaudeを使いこなすこと。
そう答える人は多いと思います。
でも、ぼくは少し違います。
これから専門職の差を生むのは、AIを使う技術ではありません。
AIが、自分の知識を使える状態になっているかどうかです。
アラフィフの専門職であれば、これまで何十年も考え続けてきました。
臨床でも、研究でも、教育でも、組織運営でも。
うまくいった経験も、失敗した経験も積み重ねてきています。
その知識は、本来ならAI時代に最も価値を発揮するはずです。
ところが、多くの場合、その知識はまだ眠っています。
PDFのまま保存された学会スライド
フォルダの奥にあるPowerPoint
文字起こしだけして読み返していない講演
タイトルだけでは思い出せない研究メモ
人間にとっては「保存してある」状態でも、AIにとっては「使えない」状態です。
だから今日お伝えしたいのは、新しいAIツールの話ではありません。
過去20年積み上げてきた知識を、もう一度働かせる方法です。
専門職が最初に取り組むべきこと。
それは、自分の知識をAIが読み込みやすい形へ引っ越しさせることです。
PDFで残っている知識は、まだ半分眠っている
学会発表を何十回もしてきた人なら、スライド資料が数多く残っているはずです。
ぼく自身も、50回以上の学会発表の内容があります。
その一つ一つには、当時の問題意識があります。
なぜそのテーマを選んだのか。
どの論文を読んだのか。
どこで迷ったのか。
聴衆に何を持ち帰ってほしかったのか。
ところが、それらをPDFとして保存しているだけだと、あとから再利用しにくいのです。
人間が見れば、スライドの雰囲気で思い出せることがあります。
図の位置、文字の大きさ、強調している色、発表したときの空気。
でも、AIはその文脈を人間と同じようには拾ってくれません。
PDFを渡せば読めることもあります。
ただ、読み取れることと、知識として引き出しやすいことは違います。
PDFのままでは、情報の構造が見えにくい。
どこが見出しで、どこが補足で、どこが自分の判断なのかが曖昧になる。
だから、AIに自分の知識を使わせたいなら、まず保存形式を変える必要があります。
これは、過去の自分の仕事を掘り起こす作業でもあります。
文字情報は、Markdownで「意味の棚」を作る
まず取り組みやすいのは、文字情報です。
音声配信の文字起こし
講演メモ
読書メモ
論文を読んだときの気づき
会議後の振り返り
こうした情報は、Markdown形式で残しておくのが扱いやすいと思っています。
ただ、Markdownにすれば何でもよいわけではありません。
大事なのは、メタデータを付けることです。
たとえば、次のような情報です。
タイトル
日付
発表した場所
想定読者
中心テーマ
関連キーワード
元になった資料
次に深掘りしたい問い
こうしたメタデータがあると、AIはその情報を文脈の中で扱いやすくなります。
単なる長文ではなく、「これは誰に向けた、どんな目的の知識なのか」が見えるからです。
専門職の知識は、単体の文章だけでは完結しません。
・どの現場で使うのか。
・どの読者に届けるのか。
・どの判断に関わるのか。
そこまで一緒に残しておくことで、AIが参照しやすい知識になります。
Markdownは、きれいなノートを作るための形式ではありません。
自分の知識に「意味の棚」を作るための形式なんです。
スライド資産は、Marpにして初めて再利用しやすくなる
もう一つ、大きいのがスライド資料です。
専門職は、スライドをたくさん作っています。
学会発表、講演、院内勉強会、研修、研究会、後輩向けの教育資料……
それらは、とても濃い知識資産です。
でも、多くはPDFやPowerPointのまま眠っています。
ここで使いたいのが、Marp(マープ)形式です。
Marpは、Markdownでスライドを作るための形式です。
スライドごとに見出しや本文がテキストとして残り、区切りも明確になります。
さらに、発表日、イベント名、対象読者、キーワード、参考文献、関連資料などをメタデータとして残しやすい。
つまり、見た目のスライドではなく、意味のあるデータとして保存し直せます。
これは、単にPowerPointを別形式に変換する話ではありません。
過去の発表を、自分専用のデータベースに変える作業です。
PDFは、発表後に配るには便利です。
でも、AIに自分の知識を引き出してもらうには、Marpのように構造が見える形式の方が向いています。
過去のスライドをMarp化しておくと、AIにこう聞けるようになります。
「過去の無痛分娩の発表から、患者向け記事に使える論点を抜き出して」
「このテーマで、アラフィフ専門職向けに話せる内容を整理して」
「この発表群から、次の講演の骨子を作って」
このとき、AIが参照できるデータの質が高いほど、返ってくるアウトプットも変わります。
もっとMarpについてもっと学びたいという方には、ウミノ|サブスタックの教科書著者のUdemy講座がオススメ。
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自分のデータベースを作れる人が、AIを深く使える
AIを使うとき、多くの人は「どのAIを選ぶか」に意識が向きます。
でも、同じAIを使っても、結果は人によって変わります。
その差は、プロンプトだけではありません。
AIに渡せる自分のデータがあるかどうか
専門職にとって、本当に価値があるのは一般論ではありません。
自分が現場で見てきたこと。
発表のために調べたこと。
何度も説明してきたこと。
失敗して、言い方を変えたこと。
当時はうまく言語化できなかった違和感。
そういうものが、過去の資料の中に残っています。
それをAIが読める形にしておく。
これだけで、アウトプットは大きく変わります。
AIは、何もないところから自分らしい専門性を作ってくれるわけではありません。
でも、こちらがきちんと材料を渡せば、過去の知識を組み替え、新しい記事、講演、教材、研究アイデアに変える手伝いをしてくれます。
だから、AI時代の専門職に必要なのは、派手なツール活用ではありません。
自分の知識資産を、AIが引き出せる場所に置くことです。
AI時代の第一歩は、知識の引っ越しである
AI時代に専門職が真っ先に身につけるべきスキル。
ぼくは今、それを「知識の引っ越し」だと考えています。
頭の中にある知識。
PDFの中に眠っている発表資料。
PowerPointに閉じ込められた講演。
文字起こしされたままの音声。
それらを、AIが読み込みやすい形へ移す。
文字情報は、メタデータ付きのMarkdownへ。
スライド資料は、Marp形式へ。
そうやって、自分の専門性をAIが参照できるデータベースとして育てていく。
これが、アラフィフ専門職にとって現実的なAI活用の第一歩だと思っています。
ここまで読んで、「これなら自分にもできそう」と感じたなら、まずは一つだけ始めてみてください。
過去の講演資料でも、学会発表でも、読書メモでも構いません。
AIと一緒に育てたい知識を、一つ掘り起こしてみてください。
もしよければ、「最初に整理したい知識」をコメントで教えてください。
みなさんが何を資産化したいと思っているのか、とても興味があります。
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次回は、知識はあるのに忙しすぎて発信が続かないアラフィフ専門職のために、「無理なく続く情報発信の仕組み」を紹介します。






おさるぼんさん、知識の引っ越しと言う概念いいですね。壁打ち相手としてAIを使っている人はいますが今までの自分の人生そのものをAIの中に取り込んでいる人はまだまだ少ないのだと思います😆🫶
過去に作ったスライドや講演メモを「PCに保存してあるから大丈夫」と安心しがちですが、それがAIにとっては「使えない状態」であるという指摘にハッとさせられました。
人間なら当時の空気感や図の位置で思い出せても、AIに文脈を正しく処理してもらうには形式から変えなければならないという理由は非常に明快で、フォルダの奥に眠っている過去の資料をもう一度掘り起こしてみたくなります。